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◆なぜ挨拶は必要か(第16話) 自己肯定感 行動習慣に働きかける③ [人材育成]




なぜか、
研修の開始時間になっても
受講生は集まりません。


Y先生は、

“おかしいな、
 自分が時間を
 間違えたのかな”

と事務局へ
確認に行こうとした時、
開始予定時刻から
10分ほど経って、
受講生が集まり始めました。


しかし、彼らには
遅れて悪いという
雰囲気はそれほどありません。


Y先生は彼らに、
研修開始時間に
遅れた理由を尋ねました。


すると・・・


彼らは言いにくそうに
「すみません」と
謝罪するだけでした。


Y先生の持ち前の
勘が働きました。


“これは何かあるな・・・”


“でも、しばらく様子を見ようか・・・”


結局、
その後の研修は
毎回10分ほど遅れて
開始するのでした。


そして、
ある時、Y先生は
ちょっと親しくなった
受講生の一人に
こそっと尋ねました。


“なんで君たちは
 開始時間どおりに
 ちゃんと来ないのか”


すると、
彼は言いづらそうに
言いました。


「実は、
 僕らは、
 遅れて悪いなと
 思っているんです。

 しかし、
 部長が席を立つのが
 研修時間になってからなのです。

 部下の我々が
 部長より早く席を立つと、
 仕事しろとか言われます。

 結局、
 部長が席を立つまで
 待っているのです」


それを聞いたY先生は、
ポパイのように
「わぉ、なんてこったい」
と言ったかどうかは
存じませんが、
とにかく驚きました。


会議や現場への
5分、10分前集合というのは、
特に生産現場などでは
当たり前の慣習ですが、

今回Y先生が担当したのは、
システム系企業の営業部隊で、
どうやらチームワークが
あまり重視されていないようなのです。


しかも、
研修の対象は営業部ですが、
その部長が
役職では一番上なのです。


その人物が
「10時になった。
 やれやれ、研修に行くか」
なのですから、
職場の風紀も
想像がつくというものです。


Y先生はあきれ半分、
部長を叱り飛ばしてやろうと
思ったかどうかは
存じませんが、
一計を案じました。


次回の研修から、
器材や座席の
レイアウトを
変えたのです。


出入り口のドアに
スクリーンを
投影するようにしたのです。


そして、
研修開始時間きっかりに
照明を落とし、
スクリーンを点灯しました。


出入り口のドアが
スポットライトに
照らされたように
浮かび上がりました。


5分経ち、10分経ち、
受講生である営業部員たちが
入ってきました。


扉を開けて
スポットライトを浴びる
気恥ずかしさといったらありません。


最後に入ってきた部長も
さすがに赤面していたそうです。


そのせいでしょうか、
次の回からは遅刻者は
出なくなったそうです。



今回、教訓として、
行動習慣の作られ方に
注目してください。


部下は研修時間に
遅刻するのは嫌だったのに、
部長の振る舞いから、
そうせざるを得ませんでした。


会社の社風や風土と
呼ばれているのは、
このように大概
上席の方の振る舞いを
後進が真似ることで
形成されていきます。


特に部下が
判断を迷っている時にこそ、
上席のとる行動が
その後も
受け継がれていきます。


クレーム処理や不祥事の
始末の仕方がそうですね。


ですから、
企業という階層社会では
上席の振る舞いが
非常に重要なのです。


部下は見ています。


こんな些細なこと、
と思われることでも見ています。


トイレで手を洗わなかったとか、

貧乏ゆすりをしていたとか、

経費で自分の昼飯を食べていたとか、

私用のタクシー代を経費で処分したとか、

必要の無い出張を頻繁にするとか、

何でも見ています。

そして、
それを真似ていきます。


もし、
ある会社に“問題児”がいるとして、
その子を処分したとしても、
また誰かが“問題児”になるでしょう。


なぜなら
原因は別のところに
あることが多いからです。


さて、
行動習慣を変えるには、
個人生活における場合と、
企業や団体といった
集団生活の場合では、
そのアプローチは大きく違ってきます。


まずは、
個人生活における場合を
取り上げてみましょう。


皆さんは
“閾値(いきち)”
という言葉をご存じでしょうか。


(続く)


◆ 今日の一冊 ◆ 

荘子の人間学 

守屋洋著


Y先生ダントツ推薦の一冊です。

著書の守屋氏は現在の日本における
中国古典解説の第一人者です。

私は昔、ポケット版の「三十六計」
の解説文書を求めました。

むさぼるように読みましたが、
特に著者などは気にとめませんでした。

久しぶりに取り出してみると、
守屋氏の著でした。

不思議な縁を感じます。

混迷の時代、荘子の考え方は
私もえらく影響されました。

「荘子」の人間学―自在なる精神こだわりなき人生

「荘子」の人間学―自在なる精神こだわりなき人生

  • 作者: 守屋 洋
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 1996/03
  • メディア: 単行本



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